QUANTUM DOTS
目次
量子ドットとは
量子ドットとは、直径2〜10ナノメートル(nm)の極めて小さな(ナノサイズ)半導体の粒子です。(1nmは10億分の1mです。量子ドットは、おおよそインフルエンザウィルスの10分の1ほどのサイズになります。)
電子顕微鏡(TEM)で見た量子ドット
コア-シェル構想の量子ドットのイメージ図
上の図のように量子ドットは多くの原子により構成されております。その数は約100個〜10,000個になります。
半導体を小さな粒子にすると、「量子閉じ込め効果」と呼ばれる現象により、大きなバルク状の半導体と比較して、光学的または電気的な特性が際立つようになります。例えば、ある半導体に、ある波長の光を照射しますと、そのエネルギーを吸収して、照射した波長より高い波長の光を発光します。サイズを小さくすると、発光強度がより強くなります。
白い線が吸収スペクトルで、色の付いた線が発光スペクトルです。
量子ドットはサイズ(粒径)により発光波長が変わる特性があります。粒径が小さいほど発光波長は低く、大きいほど発光波長が高くなる傾向があります。
量子ドットより発光する光はスペクトル線幅が狭い特徴があります。スペクトル線幅とはスペクトルの広がりのことです。量子ドットは有機の蛍光体よりは狭い線幅の光を発光します。
上のスペクトルは一般的な白色LEDと量子ドットの発光スペクトルの比較です。白色LEDの580nmピークのスペクトルが有機蛍光体の発光に対して、量子ドットは520nmと630nmピークのスペクトルになります。スペクトル線幅が狭いのが分かります。
量子ドットはトルエンまたは水などの溶媒中にコロイド状に分散した状態で保管されます。コロイド状態で保管される主な理由は、溶媒無しでは凝集してしまい量子ドットの特性を失ってしまうためです。通常、量子ドットは溶媒を揮発または乾燥させたりした後、樹脂の中に混ぜて硬化させて使われるのが一般的です。
量子ドットは多くの化学的及び物理的な合成方法がありますが、弊社が扱うNNCrystal社が特許を持つ高温での化学的な合成方法が最も成熟した製造方法となっております。
量子ドットは無機材料ですので、有機材料(有機蛍光体)と比較すると、適切な使用環境で使用した場合、劣化が少なく、長期間、安定した特性を得られることも特徴に上げられます。
量子ドットの種類について
量子ドットですが、主に以下の半導体の材料が用いられた商品があります。
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は標準品として扱っている量子ドットです。詳細はこちらを参照下さい。 |
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は特注品として提供の可能性のある量子ドットになります。ご希望の際はお問い合わせ下さい。 |
上記の量子ドットは主にカドミウムを含有する製品(カドミウムベース)と含有しない製品(カドミウムフリー)に分けられます。カドミウムを含む量子ドットは、優れた性能を持っております。しかし、重金属である為、人体または環境に対して有害であり、水銀と同様に将来的に使えなくなる懸念があります。そこで最近では、InP(インジウムリン)などのカドミウムを含まない量子ドットが主に使われる傾向があります。
また、量子ドットをコロイド状に分散させる為、量子ドットの表面上に配位子(リガンド)が付いております。その配位子(リガンド)の種類によりトルエンなどの無極性溶媒中で分散する疎水性のタイプと、水などの極性溶媒中で分散する親水性のタイプに分類することも出来ます。
親水性のタイプは疎水性のタイプと比較して発光量が低くなります。親水性の量子ドットは、コアの周りを別の材料でコーティングしたシェル層を持つコアーシェル構造の量子ドットでないと十分な発光特性を得るのが困難な状況です。
弊社では量子ドットと嫌気性アクリル系UV硬化樹脂を混合した、量子ドットコーティング剤と呼んでいる商品を取り扱っております。樹脂に混ぜて量子ドットを均等に拡散させるのは容易ではありません。その際、既に樹脂と混合拡散された量子ドットコーティング剤がお役にたちます。詳細はこちらを御覧下さい。
量子ドットコーティング剤 塗布後 サンプル
量子ドットコーティング剤 硬化後 サンプル
量子ドットテレビとは
量子ドットテレビ(量子ドットディスプレイ)とは液晶(LCD)を用いたテレビの一種で、上の図にあるように、青色LEDのバックライト上に、緑色と赤色に発光する量子ドットの層を含むフィルム(QDフィルム)を用いた構造をしており、フィルムを透過する青色の光と、青色LEDを励起光として発光した緑色と赤色の量子ドットの3色で白色のバックライトを作るテレビの事です。
上の図は、一般的な液晶テレビと量子ドットテレビの白色のバックライトの比較です。一般的な液晶テレビは、青色LEDを励起光として、黄色の有機蛍光体を発光させて白色を作るのに対して、量子ドットテレビは、青色LEDを励起光として、量子ドットの緑色と赤色を発光させて白色を作ります。
一般的な白色LEDに使われる黄色発光の有機蛍光体と比較すると、量子ドットはスペクトル線幅が狭く、緑色と赤色に関してはより高い発光強度を得ることが出来ます。
上の図にあるように、通常の液晶テレビに使われる白色LEDはRGBフィルタによって多くの光がカットされます。一方、量子ドットテレビは、より狭いスペクトル線幅であり、フィルタにほとんど光がカットされない為、より効率が高く、消費電力を低くすることが出来ます。
また、より強い緑色と赤色を発光させることが出来ますので、一般の液晶テレビと比較するとより多彩な色を再現する事が出来ます。下の写真は一般的な液晶テレビと量子ドットテレビの色合いの比較です。
液晶テレビ(左)と量子ドットテレビ(右)の比較
下図は発光する色を数値化した色度図と呼ばれるものです。Q-LCD(量子ドットテレビ)の色の再現領域が、従来の領域(sRGB)より大きくなっているのが分かると思います。
量子ドットを用いたリモートフォスファー
量子ドットは粒径により発光波長が異なる特性を持っております。その為、有機の蛍光体と比較すると、量子ドットは必要な発光波長が容易に調整する事ができます。また、量子ドットはスペクトル線幅が狭い為、照明などの発光体の色を作る際、必要な量子ドットの発光を加えて、要望するスペクトルを作り出す用途にも使われております。
下図は3色のLEDの強度の弱い部分を量子ドットの発光で強度を補い、太陽光に近くなるよう変換したスペクトルです。このように発光する光のスペクトルを量子ドットなどの蛍光体を用いて波長変換する技術を「リモートフォスファー」と呼んでおります。
上の写真は、緑色と赤色に発光する量子ドットが混合された樹脂成型サンプル品です。青色LEDを当てると、透過する青色と発光する緑色と赤色の3色で白色光を作る事が出来ます。
樹脂成型品は、上のスケッチのように電球の中の青色LEDを囲むように取り付けられます。
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